この記事でわかること
- ADHDとIQは別々の軸で、高IQのADHDの人は珍しくない
- ADHDの人のIQ平均は、定型発達と大きな差はないとする報告が多い
- WAIS/WISCでは、ワーキングメモリーと処理速度が相対的に低く出ることがある
- 高IQが困りごとを覆い隠し、ADHDの発見が遅れることがある(2E)
- 正式な知能検査は医療機関や心理検査機関で受け、WAISだけで診断はされない
「ADHDだとIQは低いの?」「IQが高いと言われたけれど、不注意やミスの多さが気になる」。ADHDとIQの関係を調べている方は、どちらかの立場で検索していることが多いと思います。
結論を先に言うと、ADHDとIQは独立した別の軸です。IQが高くてADHDの人もいれば、IQが平均的でADHDの人もいて、「ADHD=IQが低い」「IQが高い=ADHDではない」のどちらも成り立ちません。
この記事では、IQの定義から、ADHDのIQ平均について研究が言っていること、WAIS/WISCで見られやすい傾向、高IQが発見を遅らせる問題、検査を受ける流れまでをまとめました。当事者の方の体験談も引用しています。
ADHDとIQは別の軸。高IQのADHDは珍しくない
ADHD(注意欠如・多動症)は、不注意・多動性・衝動性といった行動面の特性を指す概念です。一方のIQは、知的な処理能力が同年代の中でどの位置にあるかを示す数値です。
測っているものが違うので、片方の値からもう片方は決まりません。ADHDの診断基準の中にも「IQが◯◯以下」といった項目はなく、IQが高くてもADHDと診断される人は普通にいます。
「できるのに、できない」が起きる理由
高IQのADHDの人によく語られるのが、「難しい仕事はできるのに、簡単な事務処理で毎回ミスをする」といったちぐはぐさです。知的な処理の力と、注意を保ち続ける力は別の機能なので、こうした組み合わせは珍しくありません。
本人にとっては「頭の良さ」と「日常の不便」が同居している状態で、周囲からは「やる気の問題」と誤解されやすいところでもあります。

IQとは何か(平均100・SD15の相対指標)
IQ(知能指数)は、年齢ごとの平均を100、ばらつきの単位(標準偏差)を15として、同年代の中での相対的な位置を示す指標です。「賢さの絶対量」ではなく「集団内の位置」という点が大切です。
IQは正規分布に従うように設計されているため、水準ごとの割合は統計的に導けます。
| IQの範囲 | 全体に占めるおおよその割合 | 位置づけの目安 |
|---|---|---|
| 85〜115 | 約68% | 平均的な範囲 |
| 115以上 | 約16% | 平均より高い |
| 130以上 | 約2.3% | かなり高い |
| 145以上 | 約0.1% | 非常に高い |
ADHDの有無にかかわらず、この分布は同じ物差しで使われます。ADHDの人の中にもIQ130以上の人がいるのは、分布から考えればごく自然なことです。
「全検査IQ」と「4つの指標」は分けて見る
成人向けのWAIS-IVでは、全体を示す全検査IQ(FSIQ)のほかに、「言語理解」「知覚推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の4つの指標が出ます。ADHDとIQの話では、全検査IQよりも、この4指標のばらつき(凸凹)が話題になることが多いです。
ADHDの人のIQ平均について研究が言っていること
「ADHDの人はIQが低い」と言われることがありますが、研究全体を見ると、定型発達との平均の差は小さく、個人差のほうがはるかに大きいとする報告が多いです。
日本の成人ADHDを対象にした研究では、ワーキングメモリーと処理速度の指標は低めだったものの、IQや抑うつの程度を考慮すると群の差は消えたと報告されています(Takedaら/Neuropsychopharmacology Reports/2020)。つまり、ADHDそのものがIQを大きく下げるとは言い切れない、という読み方になります。
高IQでもADHDの困難は残る
一方で、IQが高ければADHDの困りごとが消えるわけでもありません。IQ120以上のADHD成人を調べた研究では、多くの人に記憶や実行機能の検査で有意な低下が見られたと報告されています(Antshelら/イェール大学/2009)。
まとめると、「ADHDだからIQが低い」も「IQが高いからADHDの困難はない」も、研究からは支持されにくい、というのが現時点の整理です。
WAIS/WISCで見られやすい傾向
ADHDのある人のWAIS-IV/WISCでは、ワーキングメモリーと処理速度が、言語理解や知覚推理に比べて相対的に低く出ることがあるとされています。注意を保ちながら情報を一時的に保持する課題や、時間内に素早く作業する課題が、ADHDの特性と重なりやすいためです。
成人ADHDを対象にしたWAIS-IVの研究でも、ワーキングメモリーと処理速度を使う下位検査で差が見られ、全検査IQより一般知的能力指標(GAI)のほうが高く出る傾向が報告されています(Theiling & Petermann/Journal of Attention Disorders/2016)。
実際に受検した方の声です。
得意な【言語理解】と苦手な【処理速度】との、33点の大きな得点差が自分の困り感の主な原因のようだ。
生活で感じていたあれこれの不便は性格の問題だと思ってたけど脳の発達の問題でもあるようだ。
出典:本犬「WAIS-Ⅳの結果。言語理解と処理速度の凸凹【ADHD】【ASD】【大人の発達障害】」note(2023年6月)
日頃から、不注意傾向やマルチタスクの苦手意識、などに悩まされていたので予想はしていたのだが、、それが見事にワーキングメモリ低として数字に表れてしまった。
出典:えび「【ASD+ADHD】知能検査WAIS-IV結果【INFJ】」note(2024年6月)
この形に当てはまらないADHDの人も多い
ただし、この凸凹は「見られやすい傾向」であって、診断の決め手ではありません。ワーキングメモリーが高いADHDの人もいますし、処理速度が低いのは不安や抑うつ、加齢など他の要因でも起こります。
WAIS/WISCのプロフィールだけでADHDを判別する感度・特異度は十分でない、とする総説もあります。検査結果は、生育歴や日常の困りごとの聞き取りと合わせて読まれるものです。
指標の差(ディスクレパンシー)はどう扱われるか
4指標の間に15ポイント以上の差があると「有意差あり」として扱われ、本人の得意・不得意の差が生活に影響している可能性を検討する材料になります。ただし、15以上の差は定型発達の人にも一定の割合で見られます。
差の大きさそのものより、「その差が日常のどこで困りごとになっているか」を心理士や医師と一緒に読み解くことに意味があります。
高IQがADHDの発見を遅らせることがある(2E)
高い知的能力と発達特性を併せ持つ状態は、「2E(twice-exceptional:二重に特別)」と呼ばれることがあります。高IQの人は、記憶力や理解の速さで不注意の失敗を帳消しにできてしまうため、周囲も本人も困りごとに気づきにくく、診断が成人以降にずれ込むことがあるとされています。
「勉強はできたのに、社会に出てから急に回らなくなった」というパターンは、その典型として語られることが多いです。学生時代は一夜漬けや理解の速さで乗り切れても、社会人になると、締め切り管理・書類処理・複数の案件の並行といった、ワーキングメモリーと注意の持続を要する場面が一気に増えるためです。
「IQが高いからADHDではない」とは言えない
実際、全検査IQが高めでも、指標の凸凹が大きく、専門家の間でも見立てが分かれたという声があります。
私の内部的な部分で言うと、高いワーキングメモリに対して処理速度が追いついていないことでいろいろとしんどさに繋がっているらしい。
心理士さんは、あくまでこの結果だけ見た場合の個人の主観だが、ADHDではないように思う、とのことだった。
医師は、発達障害といえると思う、とのことだった。
出典:青野みなも「WAIS-Ⅳの結果が返ってきた話」note(2025年11月)
この方は全検査IQ122、言語理解130という高い水準でしたが、処理速度は96で、その差がしんどさにつながっていると説明を受けています。IQの高さは、困りごとがないことの証明にはなりません。
ここまで読んで「自分の指標ごとの得意・不得意を知りたい」と感じた方は、まず全体の目安を数値で見てみるのも一つの方法です。AI-KNOWの無料公式IQテストはWAIS-IVの構成をベースにした21問で、受検後に認定書が発行されます。ただし、後述のとおり診断の代わりにはなりません。
検査を受ける場所と流れ
正式なWAIS-IV(16歳以上)やWISC-V(5〜16歳)は、資格を持つ心理士が対面で実施する検査です。受けられる場所は主に次の3つです。
| 受ける場所 | 特徴 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 精神科・心療内科・発達外来 | 医師の診察とセットで、診断につながる | 保険適用で数千円程度(医療機関により異なる) |
| 民間の心理検査機関・カウンセリングルーム | 診断はされないが、結果の説明が丁寧なことが多い | 自費で1〜3万円程度 |
| 大学の心理相談室・自治体の発達支援センター | 比較的安価。待機期間が長いことがある | 無料〜1万円程度 |
受検から結果までの流れ
- 医療機関や検査機関に予約を取る(発達外来は数週間〜数か月待ちのことがあります)
- 初回に生育歴や現在の困りごとの聞き取りを受ける
- 心理士と1対1でWAIS/WISCを受ける(所要60〜90分程度)
- 後日、指標ごとの数値と解釈の説明を受ける(2〜4週間後が目安)
- 医療機関の場合は、医師が検査結果と問診を総合して診断の有無を判断する
受ける前に知っておきたいこと
WAIS/WISCは、それ単体でADHDを診断する検査ではありません。実際に受けた方の中にも、数値だけでは判断できないと説明された方がいます。
かなりばらつきがあるスコアです。
心理士さんはこれだけでは発達障害の判断はできないと仰っていました。
自分ではADHDを疑っております。
出典:質問者「先日、WAIS-IVを受検しました。結果は以下のとおりです。」Yahoo!知恵袋(2023年4月)
ADHDの診断は、生育歴・現在の症状・生活への支障の程度を、医師が総合的に見て行うものです。検査結果の凸凹は、その判断材料の一つです。
本テストは診断ではありません
本記事・本テストは医学的診断ではありません。発達や医療上の懸念は専門機関にご相談ください。
オンラインのIQテストは、WAIS-IVの構成を参考にしていても、心理士による対面検査とは別物です。全体の目安を知る用途には使えますが、ADHDの有無を判定することはできません。
不注意・衝動性・多動性で日常に支障が出ている場合は、IQの数値にかかわらず、精神科・心療内科・発達外来で相談してください。
よくある質問
IQが高くても発達障害はある?
あります。ADHDやASDといった発達障害と、IQは別の軸で、診断基準にIQの上限はありません。むしろIQが高い人は、知的な力で困りごとを補ってしまい、発見が成人以降に遅れることがあるとされています(2E)。「IQが高いからADHDではない」とは言えません。
指標の差が大きいとどうなる?
WAIS-IVの4指標の間に15ポイント以上の差がある場合、得意と不得意の差が生活に影響している可能性を検討します。ただし、差が大きいだけでADHDと判断されるわけではなく、定型発達の人にも差は見られます。差がどの場面の困りごとにつながっているかを、心理士や医師と一緒に読み解くことが大切です。
検査はどこで受けられる?
正式なWAIS-IV/WISC-Vは、精神科・心療内科・発達外来(診断につながる・保険適用)、民間の心理検査機関(自費・診断はなし)、大学の心理相談室や自治体の発達支援センター(安価だが待機あり)で受けられます。所要は60〜90分程度で、結果は2〜4週間後に指標ごとの説明とともに返されるのが一般的です。
自分のIQを測ってみる
ADHDとIQは別の軸で、高IQのADHDの人は珍しくありません。大切なのは全検査IQの高低ではなく、「自分はどの処理が得意で、どこで困りやすいのか」を知ることです。まず全体の目安を知りたい方は、AI-KNOWの無料公式IQテスト(WAIS-IVベース・21問・認定書付き)で現在地を確かめてみてください。そのうえで、日常の困りごとが続いている場合は、数値にかかわらず専門機関での検査・相談を優先してください。




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